20世紀の映像百科事典をひらく 映像のフィールドワーク展 vol.2 ひもをうむ、あむ、くむ、むすぶ
1952年、第2次世界大戦の敗戦後間もないドイツの国立科学映画研究所で、ある壮大なプロジェクトが始まりました。その名は「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」(以下、ECフィルム)。世界中の知の記録を集積することを目指した、“映像による百科事典”です。以降40年近くの歳月をかけ、あまたの研究者やカメラマンが世界各地に派遣され、その地に生きる人々の暮らしや儀礼、動植物の生命活動をフィルムに収めました。映像の総数は、実に3,000タイトル以上にも及びます。
2019年春、生活工房で開催した「映像のフィールドワーク展」の第二弾である本展は、ECフィルムの中から、績む 編む 組む 結ぶ 撚る 綯う 織る、という「ひもづくり」にまつわる映像約50作品(会期中入替あり)を展示上映し、身近にある植物や獣毛を素材に、衣服から住居まであらゆるものを生み出してきた人間のものづくりの原点を辿る展覧会です。
ECフィルムには、遠い昔の遠い国の人が紡いだ、美しい手仕事の時間が記録されています。本展では、そのタイムカプセルを21世紀に開き、映像を「みて」草や古布など生活の中から素材を採集して「やってみる」、そして自分の「手から考える」ことを実践するワークショップも行います。映像をフィールドワークすることの愉しさと「みる、やってみる」のアイデアを散りばめた展覧会へ、ぜひご来場ください。
エンサイクロペディア・シネマトグラフィカとは?
「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」=ECフィルムは、世界中の人の暮らし、生き物の生態を記録して映像の百科事典を作るという壮大なプロジェクトです。
1952年、第二次世界大戦の敗戦後間もないドイツ・国立科学映画研究所ではじまりました。以来たくさんの研究者やカメラマンが世界各地に赴き、3,000タイトルを超える貴重な映像アーカイブを制作しました。
人びとの暮らしの習慣や衣食住、もの作り、音楽、儀礼などを記録した民族学映像、様々な生き物の行動や生態を観察した生物学映像、機械工学や技術史などを取り扱った技術科学映像の3つの主軸で構成されています。
研究、教育を目的に制作されたこれらのECフィルムは各国機関に渡り、日本では1970年より下中記念財団が管理・運用を行なっています。
EC活用プロジェクトについて
16mmフィルムで記録、保管されていたために、長い間上映が行われていなかったECフィルム。これを再び開いてみたい!と、有志によるプロジェクトがスタートしたのが2012年。映像のデジタル化やウェブサイトの検索リストの作成、貸し出しを行うだけではなく、アーカイブ映像の新たな活用方法を模索。タイムカプセルを開け、一緒に旅をするように映像を見るスタイルを「映像のフィールドワーク」と名付け、実験的な展示や上映会、ワークショップを続ける。「観る、やってみる、問い続ける」ことで、映像の現代的な価値を探究中。
メンバーは下中菜穂(造形作家、伝統切り紙研究 旧暦カフェ主宰)中植きさら(ポレポレ東中野)丹羽朋子(文化人類学)。